早速ですが、裁量労働制についてご存知でしょうか?
業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度
引用元:厚生労働省
こうした状況に対応した新たな働き方のルールを設定する仕組みとして、事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象とした「企画業務型裁量労働制」が2000年(平成12年)4月より施行されましたが、平成16年1月1日より、この制度がより有効に機能するよう、その導入に当たり、労使の十分な話合いを必要とすること等の制度の基本的な枠組みは維持しつつ、同制度の導入・運用についての要件・手続が緩和されています。
引用元:厚生労働省
簡単に言うと、定時制ではなく、あらかじめ労働者を●●時間働いたことにして給与が支払われる制度のことです。
つまり、文章上では仕事が早い人、優秀な人が得をする制度ということです。
では、本当に裁量労働制はうまく機能しているのでしょうか。
答えはNo。
僕が今働いている会社は業界の中でも残業が多いと言われていますが、
「裁量労働制=仕事が早く終われば得。でも終わらないから損してるよね〜」
みたいな会話が現場で飛んでいるのが事実。
そんな会話が飛び交う中、本当に裁量労働制は優秀な人にとって得なのかどうか気になって、裁量労働制について色々と調べてみたんですけど、そうしたら
うちの会社、色々とヤバいんじゃね?
ていうか裁量労働制って実質無能が得する制度なんじゃないの?
みたいな部分が見えてきたので記事にしてみました。
そもそも、裁量労働制とは?
先ほど簡単に紹介しましたが、もう少し詳しく説明すると、
裁量労働制には2種類あって、専門業務型裁量労働制と、企画業務型裁量労働制というものがあります。
定時制度を廃止・企業側が残業代を出さなくても良い裁量労働制、専門業務型裁量労働制というのは、限られた業種にのみ適応されるものです。
厚生労働省の業種紹介のページはわかりにくかったので、わかりやすいところから引用すると、
専門業務型が適応される職種(引用:BIZHINT)
- 新商品もしくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
- 情報処理システムの分析または設計の業務
- 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務
- 衣服、室内装飾、工業製品、広告などの新たなデザインの考案の業務
- 放送番組、映画などの制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
- コピーライターの業務
- システムコンサルタントの業務
- インテリアコーディネーターの業務
- ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
- 証券アナリストの業務
- 金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発の業務
- 大学における教授研究の業務
- 公認会計士の業務
- 弁護士の業務
- 建築士の業務
- 不動産鑑定士の業務
- 弁理士の業務
- 税理士の業務
- 中小企業診断士の業務
こんな感じ。
簡単に言うと、クリエイティブ系の仕事であったり、専門的な知識を必要とする業務には、労基に申請して許可が出れば裁量労働制が適用されます。
また、もう一つの企画業務型裁量労働制については、一定の条件をクリアした職場で、事業の企画や広報を取り扱う職種に適用される制度です。
僕の会社では、ゲーム用ソフトウェアの創作の業務を行っているので、専門業務型裁量労働制が採用されています。
マーケティング部などはゲーム創作業務を行っていないので、制作事業部以外はおそらく企画業務型裁量労働制が採用されているんでしょう。
カスタマーサポート部にはこの制度が適応されていないはずですが、専門業務・企画業務どちらにも当てはまりませんから対象とできないのでしょう。
(うちの営業は実質マーケティング部と別会社が行っているので、営業が無いと言って良い)
守られるべきは36協定?裁量労働制?
働くにあたって必ず知っておきたいのは36協定です。
これは簡単に言うと、一定の条件をクリアし、申請して許可が降りれば企業は従業員に残業させることができるという協定です。
会社と従業員の雇用契約の間に36協定があるのであれば、1日8時間・週40時間以上の業務をさせることができます。
が、協定があるからといって何時間でも残業をさせて良いわけではなく、36協定が結ばれていても週15時間・月45時間を超える残業をさせることは違法なんですね。
更に特別な申請をすれば45時間以上の残業が認められますが、決算期の対応、大規模なクレームの対応など、かなり限定的な状況でないとこの特別申請は無効です。
調べてみたら、36協定が効力を発揮するためには結構しっかりした手順・仕組みが必要なんですね。。弊社、効力発揮できないのでは…?笑
話が少しそれましたが、ここまで36協定についてお話してきた中で、36協定と裁量労働制に何の関係あるのかよくわからないですよね。
むちゃくちゃ簡単にまとめますね。
- 裁量労働制:実際に働いた時間ではなく、みなし労働時間で給与が支払われる
- 36協定:週15時間・月45時間以内であれば残業させることができる
つまり、会社が裁量労働制を採用していた場合、36協定で違法とされている週15時間以上の残業をしていたとしても、会社がみなし労働時間を8時間と決めていた場合、36協定は無効になるのではないか、ということになるわけです。
これ、調べてみたんですけど、裁量労働制と36協定の場合だと効力が強いのは36協定のようで、いくら裁量労働制といえど一定の時間以上の残業は禁止されているんです。
が、残業にはみなし労働時間が有効になるはずので、就業規則に同意した段階でこれは主張しづらい。。
ただし、ここをしっかりと説明されていないのであればこの同意は無効にできる…みたいなことってないんでしょうか。
二転三転してしまう複雑な制度。
だからこそ企業はどこかに抜け道を作ってるような気がしてなりません。
うーん、どうなんだろう。
この件に関しては、僕の会社がみなし労働時間を何時間に設定しているかで話が変わってくるので、とりあえず就業規則を貰うのを待とうと思います。
色々とヤバいのでは?と思うところ
裁量労働制と36協定の関係意外にも、色々とOUTな部分が垣間見える弊社。そのヤバそうなポイントを紹介してみます。
”定時”という概念があり、日に日にそれが強くなっている
裁量労働制には定時という概念がありません。フレックスタイム制のようにコアタイムも存在しないんです。
つまり、定時を強制させる力は弊社には無いということ。
それなのに、なぜか定時の概念が日に日に強くなっていっているのが謎なんですよね。
後述しますが、裁量労働制は仕事ができない人間しか楽しない制度なので、仕事ができる人からすると、

的な脅しをかけられていることになるんですよね。
(実際ここで揉めて辞めた人もいます)
特に、この脅しはクリエイティブ業務をしている人にとっては致命的で、時間を掛けないと良いものが生まれないけれど、時間を掛けと会社から圧が掛かってしまうんですよね。
制作の時間を短縮すればいいじゃん
と思うかもしれませんが、実際に僕もシナリオライターとしてクリエイティブ業務に携わっていたこともあるのでそれができないことを身をもって体験していることと、そもそもそれができないからこその裁量労働制なんですよね。
制作時間の短縮については、実際に業務をした人間じゃないと実感しにくい部分だと思うので、あまり声を大にして言えませんが、そもそも裁量労働制を採用している環境においてこういった定時を設けるのはナンセンスです。
そして、裁量労働制が適用される環境において定時に効力を持たせることは違法です。(定時出社しないと罰則やペナがあるetc)
これ、逆に言うと効力を持たせなければ違法ではないんですが、弊社は…
- 会社役員や上層部が朝の10時に来るよう全体的に周知告知している
- 朝の●●時から全体集会を行い、朝こない人許すまじの環境を作り上げている(具体的な時間は身バレ防止で隠します)
- 朝来ない社員に対して、役員or人事から各チームリーダー(つまり僕)が指導され、社員への出社を促すよう言われる
- リーダーが指導しても来ない場合は、別途人事面談或いは役員面談が設けられ、直接注意喚起、指導される
こんな感じなんです。これ、十分効力持ってますよね?
え、効力持ってるって思うの僕だけですか?
裁量労働制であっても深夜手当て(10時以降の勤務)は出さなければいけない
裁量労働制であっても、企業は深夜手当て(×0.25の報酬)は出さなければいけません。
…が、これ、給与明細に記載されていない。
仮にこれもみなし労働時間に加えている…となると完全にアウトな気がするんですが、どうなんでしょう。
裁量労働制を採用している企業であれば深夜は残業単価を加えた1.25は支払われることは無いと思いますが、この辺すごくわかりづらいですね…。
1.25が支払われるケースってないのでしょうか?
どこかに分かりやすく説明してくれているところがあるといいんですけど、見当たらないですね…
休日出勤は裁量労働制の枠には当てはまらないが、代休という選択肢もある?
裁量労働制は、あくまで就業日に適用されるルールなので休日は関係ありません。
(会社は土日祝が休みです)
であれば、休日出勤をした場合、しっかりと労働時間分の給与を会社は支払わなければいけないですよね。
或いは、代休を与える…というのもルールとしてOKのようです。
代休取っていいよ
と言われるんですが、裁量労働制が適用されるような忙しい環境の中で、代休取るなんて出来ないんですよね。
(僕は頑なに取っていましたが、控えめな性格だと絶対に無理です)
ここで気になって調べてみましたが、実際に代休を取るか取らないかは関係ないみたいですね。
これ、鬼すぎる…
裁量労働制は、無能ほど得をする環境が作り上げる
定時という概念でも少し触れましたが、弊社では無能ほど得をして、有能な人ほど損をするという裁量労働制の良さが全く活かされない環境が出来上がってしまってるんです。
というのも、本来裁量労働制は、時間に縛られずに自由に働けることがメリットですし、意味を理解すれば、要は仕事さえ早めに終わらせてしまえば働くていい制度なんですよね。
ですが、現実はなかなかそううまく機能せず、有能な人であればあるほど仕事がどんどん舞い込んでくるんです。
無能に仕事を任せられないので、信頼できる人にどんどん仕事を任せていく結果、裁量労働制の良いポイントが反対のベクトルを向いてしまい、結果無能が仕事をしなくていい環境ができあがります。
敢えて厳しく無能と称していますが、実際に僕のチームにもこういった子がいたのは事実です。
僕の中で無能とは、納期厳守の意志が確認できない / 商品価値のあるクオリティを出す意志が確認できない / 他メンバーの業務に影響を及ぼす の3点を無能と定義してみます。
クリエイティブ系の業務なので、納期が守れないことやクオリティにバラつきがあるのはまぁよくあることですが、納期が守れないのと守ろうとしないのは完全に別の話であって、厳しく評価せざるをえないんですよね。
と、まぁそんな具合に無能…つまり仕事を任せられないメンバーと、信頼して仕事を任せられるメンバーというのはどうしても出てきてしまいます。
そして、僕の業務における課題はマネジメントだけでなく、そういった業務の采配をどこまで妥協できるラインに移動させることができるか…というものでもありました。
が、結果として僕がまず入院して崩れてしまったし、僕が入院&休職している間にメンバーが辞めていっているのも事実。
こればかりば僕の実力不足だったとしか言いようがありません。メンバーのみんな、ごめん。
まとめ|裁量労働制で得をする人は仕事ができない人
ここまで裁量労働制について自分の見解を話してきましたが、実際就業規則にどのように組み込まれているのか、そしてみなし労働時間は果たして何時間に設定されているのかで今後の見解は大きく変わる…はずです。
…が、弊社では裁量労働制の良い部分が完全に掻き消されてしまっているのは事実で、得をしているのは仕事ができない人たちだということはまぎれもない事実です。
違法性が見つかるからと言って訴える…とかはもう面倒なんでしませんが、出ないと思っていた残業代が出るのであれば是非いただきたいものですね。
裁量労働制について詳しい方がいれば是非TwitterなんかでDMやらメンションやらでアクションしてもらえれば嬉しいです。
散々裁量労働制を否定してきましたが、これは正しく使用できればありがたい制度です。
ここまで僕が裁量労働制を否定するのは、会社の役員が変わったタイミングで色々とこの記事で挙げたおかしいと思うところが出てきたからであって、決して裁量労働制や業界全体をdisってるわけではないのでその辺は理解してもらえたらいいかなと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。だいすけ(@apainidia)でした!